電子書籍が失敗するだけならいいが

ASCII.jpの池田信夫の「サイバーリバタリアン」を読む。

電子書籍でも失敗を繰り返すメディア業界の「ガラパゴス病」

衰退産業だし悪あがきは仕方がないってとこか。実はこれに関連して個人的に気になることがあるんだが。

つい先日、TBSラジオ伊集院光 深夜の馬鹿力で、放送した内容を有料で販売するというアナウンスがありましてね。それが10分単位の3分割で、おまけに1本が100円ときた。あれですな。暖炉の火を一万円札でつけるような人向けのサービス。


もちろんこれは伊集院光氏が強欲だから、ではなくて、配信システムの課金が100円単位で、1ファイルにつき10分が上限という制約があるかららしいんだけど、なんて馬鹿げたシステムなんだろう。江戸時代かよ。


テレビとか新聞雑誌、ラジオといった「斜陽で現場の人間が高齢で文系だらけの業界」は、ことごとく電子化やネットワーク化に失敗している。しかも失敗していることに気がついていない。

もっと正確に言えば、粗悪な製品やサービスを不当な価格で売りつけられ、それで効率は悪化しコストが増えているのに、ITとはこんなものだと思い込んでいる。書類のコピーの取り方がわからなくてOLに馬鹿にされてる管理職の構図。

分かりやすい例をあげれば、近所のスーパー。新品のレジに入れかえたとたんに会計が大行列。見れば清算や釣り銭のステップでレジからネットワークの通信が始まり5秒以上の遅延が発生、それが大渋滞を引き起こしている。結果として、1レジ2名にして混雑時を乗り切っているが、そのコストたるや、商品売り上げのデータベース化によるメリットなど消し飛ぶだろう。第一客が逃げる。作ったヤツが一度でも使っていれば、こんなひどい仕様にはしなかったハズだ。馬鹿じゃなければ。


IT業界は仕事がキツくて残業代も払ってもらえなくてブラックだと言われる。でもこれ前にも書いたけど、問題の本質は労働環境の劣悪さじゃない。そこから生み出されるヘドロのようなソフトウェアが問題なのだ。それが産業全体の効率を低下させ、労働者や顧客のストレスを増やしている。そして、そんな劣悪な製品やサービスを平然と販売し、何の反省もない経営者だからこそ結果的に労働環境が劣悪になるのだ。他の業種のように不良品を流通停止にする仕組みさえあれば、残業代どころか能力の低いSEは失業するし、そんな社員を次々と雇う会社など潰れる。


先の電子書籍のガラパゴス化も、出版社側のおじいちゃん達からすれば、なんとかして既得権を守り、黒船を水際で撃退したいと必死に考えた結論なんだろう。でも実際は、悪質なIT業者の格好な餌食になるのは間違いない。何にも知らない素人に、学生に作らせた効率が悪くて遅いソフトを無茶苦茶な値段で売りつけ、著作権保護機能が必要ですだの、ネットの帯域を占有するんで金がかかりますだの、サーバーの維持費が高いんですだの、ハゲタカのような連中がよってたかって金をむしり取り、肝心のサービスはろくに広まらずに終了。そんなとこじゃないですか。


でもそんな負の連鎖も、メディア最後の巨人「テレビ業界」が食い物にされれば終わる。ネットとの融合だ双方向性だと叫びながら、やたらコストばかりかかって視聴率のとれない番組を連発。すごくきれいなデジタル映像を血反吐のようにまき散らしながら、とてつもない音をたてて倒れるんじゃないだろうか、テレビ業界は。

ま、正直言わせてもらえば、こういう業界は悪あがきでもなんでもやって、ため込んだ金を吐き出してさっさと自滅してほしいんだよね。彼らは体質も内容も古いしつまらない。それになにより後がつかえてる。


彼らが独占しているものが解放されれば、今はまだ効率が悪いサービスも徐々に改善され、世界標準にあわせたフォーマットにのせて「何か」を提供する若いのが出てくるだろうし、それをおもしろがる世代も増える。だってさ。プログラムが書けて海外のゲームが好きでPaypalで支払を済ませるような私がおじいちゃんになる時代が来るんだぜ、もうすぐ。世の中が変わらないわけないじゃん。

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